ベーシックインカムについて

 では、人々を強制や支配から解放するにはどうすればいいのか?

 物語の中でも繰り返し述べられていたように、アンチワーク哲学では「お金を刷って、万人に配る」タイプのベーシックインカムを支持しています。「誰も働かなくなるのではないか?」「インフレをもたらすのではないか?」と、なんとなく恐怖心を抱く読者も少なくないでしょう。その点についてはニケの口からも説明されましたが、より詳しい説明は参考文献を参照してください。

 ブレグマン『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』では、世界各国でのベーシックインカム実験が勤労意欲を減衰させるどころか増進させ、健康状態が改善し、犯罪は減り、酒やたばこの消費量が減ったという結果を示していることが書かれています。貧民街の薬物中毒者にお金を配っても同様だったそうです。もちろん、ベーシックインカムの実験は期間が限られていたり、一部の人にしか配られなかったり、常に不完全ですので、その結果は謙虚に受け取る必要はあるでしょう。それでも、ベーシックインカムの有効性を支持する強力な根拠であることには変わりありません。

 また、サンテンス『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう 誰ひとり取り残さない経済のために』では通貨発行のメカニズムやインフレのメカニズムについての説明がなされ「お金が配られればインフレになる」という考えが批判されています。

【参考文献】

ルドガー・ブレグマン『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』文藝春秋
スコット・サンテンス『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう 誰ひとり取り残さない経済のために』那須里山舎