結論
■BIが全ての社会問題を解決する
さて、回り道をしてデメリットにも目を向けてきたが、私の結論は変わらない。既存の社会保障の大部分を据え置きにし、国債発行(通貨発行)を財源としたBIを支給することで、全ての社会問題が解決解決される。時間をかけて犯罪や医療保険、少子化といった社会問題が解決されていくことで、様々な政府支出は改善されていくと、私は見込んでいる。
そして人々が労働という名の支配から解放され、誰かへ貢献することの喜びが再び見出される。競争がもたらしていた不要な労働や環境破壊も消えていく。
私は、その社会をユートピアと呼びたいという誘惑に抗うことができない。BIが実現した社会とは、紛れもなくユートピアである。
もちろん、「そんなにうまくいくはずがない」と私の議論を一蹴することは可能だろう。だが、逆に聞きたい。「BI以外で、これらの問題をどうやって解決するのだ?」と。
ペットボトルを分別すれば環境問題は解決するのか? 電気自動車を増やせばいいのか? それとも世界中の二酸化炭素を吸収する機械でも作るつもりなのか?
保育所をいくつ増やせば少子化は解決されるのか? 全女性の卵子を凍結しておけばいいのか? 金がないのにどうやって子どもを産めというのか?
健康問題を解決するには人々が毎朝ジョギングをすればいいのか? あと何種類のワクチンを打てばいいのか? 精神科に列を作る人々を健康にするためには、あとどれだけの新薬が開発されればいいのか?
犯罪を無くすには監視カメラの数を倍にすればいいのか? 学校で「犯罪はダメだ」と教えて回ればいいのか?
そのための税収を増やすために経済成長すればいいのか? DXを推進し、ジョブ型雇用に切り替え、人生百年時代へ向けたリカレント教育を普及させつつ、子どもたちにはプログラミングと英語を教えればいいのか?
それで、何か成果は得られそうだろうか?
どう考えても、そんな解決策の方が現実味がないように思われる。あぁだこうだと議論している間に、危機はジリジリと私たちの方に迫っている。
時間は多くはない。もうBIしかない。他に選択肢はないのだ。